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ポンペイの Pink Floyd            [Pink Floyd]


 70年代前半 僕が高校の頃、NHK 1チャンネル(総合)で ”ヤングミュージックショー” という垂涎の番組があった。 そこで、後には「ポンペイのライブ」と呼ばれる Pink Floyd のライブをやった。 大事である。 ビデオ録画などは夢のまた夢の時代、僕は当時 主力だった Sony のテレコ、(オープンリールで5号までのモノラル、9.5cm/秒)を用意し、テレビのイヤフォンジャックから録音した。 TVの音声というのは要はFMであるから、思いのほか いい音で録れた。 それを擦り切れる程、聴いた。

 ポンペイのライブはいい。 ピーカンの昼ひなか、ローマ時代の円形競技場での Pink Floyd 、シュールだ。 71年の10月だったというから、箱根のすぐ後になる。 

 彼らが初めてシンセサイザーを使ったのは ”狂気” だったと思う。 この頃のリックライトは主にハモンド、あとはピアノだけだ。 その他のパートの機材もいたってシンプル。
 出もとは必ず生楽器で、その後 音を加工するのは、エコーマシンとディストーション、クライベイビーにリングモジュレーターくらいのもの。 あとはテープを使うことであのサウンドを作り出している。 アナログである事は勿論のこと、生楽器による生演奏で基本的には成り立っている。

 ピンクフロイドで手もとの楽器を除いて最も重要な機材は、使われ始めたばかりの PA と、ビンソンのエコチェンだろう。 エコチェンとはエコーチェンバーの略。エコーマシンの事で、いまで言えば ディレイマシン になるだろうか。 当時、ミラノやら Ace Tone のスペースエコー(だったか)、いずれテープ式のエコーしかなかったのに、ビンソンは非接触の磁気ドラム式だった。 

 エコーズの途中で効果音をバックにギルモアが怪鳥の鳴き声のような音をストラトから出している。 身近なある人がこのポンペイを見て気付いたようなのだが、クライベイビーを逆に繋ぐと発振してあの音が出るのだという。 本物のクライベイビーとコピー物があった時、やってみた。 クライベイビーとはワウワウマシンの本家のようなもので、定かではないがイタリアのジェンという会社製のものだけが名乗れるものだった。 はたして本物のほうだけはしっかりと、紛れもないあの 怪鳥の鳴き声 を出した。 ストラトのマイクスイッチやボリュームのつまみをいじると、様々に変化してゆく。 その時の興奮を想像して欲しい。

 ”ウマグマ” の裏ジャケットには当時の使用機材が陳列されているが、69年のこの頃と71年のポンペイまで、大きな変化はないように思われる。 これは進歩的と言われた彼らが、あくまで機材は人間が使いこなすもの という揺るがないスタンスを確立していた証左ではないだろうか。



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